それはあり得ないです。
なぜなら、売上を作るには仮説検証のサイクルを回さなければならないからです。そして、仮説も検証も数字で表されます。数字が苦手でどうやって仮説を作るのでしょうか? どうやって検証するのでしょうか?
売るのは得意だけど数字が苦手な店長へ
売るのが得意なある店長が、新商品のスマートフォンを50台売ろうとしていました。売るのが得意な店長ですから、どうやって売るか――販促策はありました。先着50名にギフト券をプレゼントすることにしました。
私は素朴な疑問を彼にぶつけました。「どうして50台なのですか?」と。
彼から明確な答えは返ってきませんでした。「そのくらい売らなきゃ」と言うだけです。
50台くらい売れるだろうと言う予測か、あるいは、50台くらい売らないと目立てないというプライドかもしれません。
まあ、それが悪いとは言いません。それでも売場の数字には計画があります。
売場の計画
今月いくら売ると言う売上計画。
次に販売計画。販売計画は売上計画をより具体的にするモノです。たとえば、Appleが400台、Samsungが200台、SHARPが100台、SONYが100台という具合に。もっとも通常は主要な端末毎に計画値を割り当てます。なぜなら、その方がより具体的になるからです。
iPhone11を100台売るなら100台分の発注が必要だとわかります。一人当たりの接客時間から実現可能なのかどうかがわかります。
次がアクションプラン。販売計画を元にアクションプラン(行動計画)を作ります。アクションプランとは、販売計画を達成するために、具体的に何をするかが書かれた計画です。店の場合、このアクションプランが仮説検証のベースとなるモノです。
つまり、新商品の発売は予め販売計画に組み込まれているわけです。したがって、新商品を何台売らなければならないかは、発売前からわかっているはずなのです。
数字が苦手な店長の問題点
数字が苦手な店長は根拠のある数字を作ることができません。50台という数字が達成可能なのか、それとも無謀なのか、あるいは過小なのか、まったくわからないわけです。
根拠のない数字を挙げる店長は部下に負担を強います。人は、ゴールなしに走ることはできません。しかし、ゴールがどこにあるかわからないのも、またきついです。
たとえば、前のモデルは発売2週間で45台売れたと言うデータがあるだけで話は変わります。50台は達成可能なゴールかもしれないと部下は思うわけです。
このような数字は自分で取りに行かないと得られないです。数字が苦手という店長さんは、「手間を惜しんでいるだけなのでは?」と思わないではありません。
部下に優しいのはどっち?
私は「オレは売上にしか興味はない。オレに人生相談はするな!」と言って、部下の個人的な悩みには関わらずにいました。これで私のことを嫌いになった部下もいるでしょう。実際、上司に「部下の面倒も見ろ」と言われたことがあります。
それでも私は達成不可能な仮説を提示したことはありません。
「面倒見がいい」と言われる店長が達成不可能な仮説で部下に負担を強いる話を聞いたことがあります。
私は部下に嫌われたかもしれませんが、負担を強いないことは誇りにしていました。
計画の作り方
売上計画は店長が作ります。数字が苦手と言っている店長は売上計画が作れないという人が多いです。
そこで、ここでは売上計画の作り方の簡易バージョンをご案内します。
- 損益計算書を用意する
- 家賃と人件費を足す
家賃は変動しないが、人件費は季節毎に変動する。繁忙期はパート、アルバイトが多くなって人件費が増え、閑散期は減る。したがって、昨年実績を元に、月毎に合計していく方がいい。なお、人件費は次年度はどのくらい給料がほしいかを考えて予め足しておこう。 - 家賃と人件費以外の販管費を足す
光熱費、買い物袋代、荷造り送料、保守保全費、販促費など、売上に比例して増えるものが多い。昨年実績を参考にすればいいが、よくわからなければ家賃と人件費の合計に20%を計上しておく。ほとんどの店はこれで大丈夫である。なぜなら、店の場合、経費のほとんどが家賃と人件費と言った固定費だから。
この数字が採算ラインの粗利額。大雑把な数字だが、これ以上なら黒字、これ以下なら赤字。したがって、計画値はこの数字以上に設定する。
売上計画の例は次の通りです。
家賃 | 100万円 |
人件費 | 400万円 |
販管費 | 500万円×20%=100万円 |
採算ライン粗利額 | 600万円 |
つまり、粗利率が30%の場合、採算ライン売上は3,000万円となる。
このように売上計画はサクッと作ることができます。数字が苦手と逃げないでトライしてください。作ってみたらカンタンだと思えるでしょう。
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