「(極めて残念そうに)仕方ありません。それはお客様の権利ですから……」と言って、クレーム対応を打ち切りましょう。
こんにちは、パワー店長養成講座主宰の小宮秀一です。私はアキバを拠点とする家電量販店とパソコン専門店で20年間、パソコン販売に携わってきました。
22歳の時に個人年間売上1億円を達成し、27歳で売場主任――もっとも若い売場主任――、その後、7つの売場のマネージャー、そして2つの店舗の店長を務めました。最初に店長を務めた店はゼロから年商25億円の店を立ち上げ、2つめの店では「半年以内に30パーセント売上を上げろ。できなければクビ」というパワハラな命令を3ヶ月で達成しました。
2008年からパワー店長養成講座と言うサイトを立ち上げ、現在は、小売店の売上アップのお手伝いをしています。売上にこだわるのが私の信条です。
【結論】「消費者センターに言うぞ」と言われたら?
「(極めて残念そうに)仕方ありません。それはお客様の権利ですから……」と言って、クレーム対応を打ち切りましょう。
もし、「消費者センターに言うぞ」が脅迫と思っているなら違います。「裁判所に訴える」のと同様、「消費者センターに通報する」のも国民の権利です。脅迫でも何でもありません。裁判所でも消費者センターでも、「訴える」と言われたら「どうぞ」が基本です。
なぜなら、私たちにとって消費者センターは怖いところではないからです。もちろん、お客様を騙そうとしたり、誤魔化そうとしていたら、確実にやっかいなことになります。しかし、法令を遵守していたらまったく問題ないです。
消費者センターに関わったこと1回
私が消費者センターに関わったことは、現役から今に至るまでたった1回しかありません。その1回の話をします。
これは私の直属の上司の話です。彼は自分に甘く、他人に厳しい、上司としては最悪の人間でした。
しかし、彼は担当した4つの売場をすべてアキバナンバー1にしたやり手です。彼の最初の実績が、まだ生まれたばかりのワープロ専用機の売場を、担当した3ヶ月で売上を10倍にしたことです。その後、売場も10倍になり、それが起こったのはちょうどこの頃です。
ワープロ専用機の売場には、メーカー7社が販売応援を入れていました。全員が学生で女性でした。全員が販売力が高かったです。アキバナンバー1の売場なのでエース級が投入されていたのでしょう。
販売応援が自分の機種を説明
そのお客様は大手商社の役員でした。上司は、ブラザーのワープロ専用機を勧め、支払いを済ませ、商品を梱包している最中でした。
お客様は売場を歩き回り、他の機種を見ていました。
事件は、キヤノンの販売応援の接客で始まりました。
「ブラザーと比べてこれはどうなの?」
販売応援の女性はブラザーのワープロを研究していて、キヤノンでできてブラザーでできないことを調べ上げていました。彼女は聞かれるがまま、お客様に説明しました。
彼女はただ自分の仕事をしただけです。他人に厳しい上司も、そのことで彼女を責めることはしませんでした。
彼女の説明を聞いたお客様は気が変わり、ブラザーのワープロを梱包して持ってきた上司に「それ止めて、こっちに変えて」と言いました。
上司はお客様の判断に異を唱えました。「キヤノンは難しい。ブラザーの方がわかりやすい」と必死に説得しました。
「キヤノンが難しい」のは上司の言う通りでした。キヤノンのワープロは高機能な分、初心者にはわかりにくいのです。
しかし、お客様は納得せず、「いいや、こっちがいい」とキヤノンのワープロを買うことを譲りませんでした。
結局、上司は「難しくても交換しませんからね」と言って、キヤノンのワープロを売りました。
「難しくて使えない。交換してくれ」
そしたら案の定、翌日、「難しくて使えない。ブラザーと交換してくれ」と電話が掛かってきました。上司は「難しくても交換しませんと言いました」と、交換を断りました。
それを聞いたお客様――商社の役員――は「お前、クーリングオフを知らないのか! 消費者センターに通報するぞ」と言いました。上司は「通報したいなら、どうぞ」と言って電話を切りました。
なぜなら、私たちには何の落ち度もないので、まったく問題ないからです。
ちなみに、クーリングオフは通販や訪問販売だけです。店頭で購入する場合はクーリングオフは適応されません。なぜなら、商品を確かめることができるし、いつでも立ち去ることができるからです。
消費者センターから電話
40分後、消費者センターから電話が掛かってきました。私が電話に出て上司につなぎました。
上司は消費者センターの担当者に事情を説明しました。「キヤノンのワープロはむずかしい。ブラザーにしなさいと言ったのに、キヤノンがいいと言ったのはお客様。信用してもらえなかったら、自分たちのいる意味がない」と言いました。消費者センターの担当者は「よくわかりました。お客様にも経緯を確認します」と言って電話を切りました。
20分後、消費者センターから「お客様が今回の件、謝罪するので交換してあげてほしい」と連絡がありました。「それなら」と上司は矛を収め、「では、来店してくれたら交換する」と言いました。
お客様が頭を下げる
その日の夕方、お客様が来店し、上司に頭を下げました。後にも先にもお客様に頭を下げられたのは、これ一回切りです。
それ以来、クレームがこじれたら消費者センターを使おうと思っているのですが、残念ながらこれまでチャンスがありません。
【再結論】「消費者センターに通報するぞ」と言われたら
もし、お客様に「消費者センターに通報するぞ」と言われたら、「どうぞ」がお勧めです。
消費者センターは全面的に消費者の味方というわけではありません。消費者センターは買い手と売り手の間に立って仲介してくれます。両者が片方だけが得をしないように、損をしないように交渉してくれます。
したがって、お客様から「消費者センターに通報するぞ」と言われたら「(極めて残念そうに)仕方ありません。それはお客様の権利ですから……」と言ってクレーム対応を打ち切るのがお勧めです。
理不尽なクレームと感じたら、消費者センターを使ってみてはいかがでしょうか。
コメント
コメント一覧 (1件)
とても勉強になりました。
有難うございます。