それはPOPを付けると異常値を叩き出すことが多いからです。
おはようございます、パワー店長養成講座の小宮秀一です。
POPについて次のような突っ込みを頂きました。
「POPを書いたからと言って給料が5万円増えるわけじゃない」
確かに、5万円増えるかどうかは取扱商品の粗利次第です。
しかし、POPのメッセージ次第ですが、通常の倍以上売れることは普通に起こりますし、10倍以上売れることも珍しくないです。
たとえば、粗利200円の商品が週50個売れていたとします。粗利は1000円です。それが2倍になれば2000円、1ヶ月なら8000円です。その差4000円。コレはPOPを付けなければ、存在しなかった数字なのです。
普通の店長なら、彼/彼女の機嫌を損ねないように便宜を図るでしょう。私なら、昇給か、ボーナスか、あるいは使える経費の増額かを選ぶように提案します。
本当に2倍も売れるのか?
そういう疑り深い人のために事例を2つ用意しました。実は、どちらも「通常の2倍」どころではないのですが……。
一つは「白い犬とワルツを」の事例です。POPを付けたことがきっかけでミリオンセラーになりました。コレはPOPの事例として有名で、ビジネススクールでも取り上げられます。なので、あなたも知っていると思います。
もう一つは私の事例です。
店で企画したカスタムモデルが、本店の2倍の売上を記録した事例です。このことは何度も書いていますが、実は、この売上はPOPなしにはあり得なかったのです。
事例1「POPを付けた商品がミリオンセラーに」
津田沼の書店、BOOKS昭和堂の書店員、木下和郎氏が書いたPOPがきっかけで「白い犬とワルツを」と言う文庫本がミリオンセラーになりました。
「白い犬とワルツを」がBOOKS昭和堂で、多く売れていることがニュースになったのは、出版から3年が経った2001年夏のことです。
なぜ、ニュースになったのでしょうか?
出版社である新潮社のパブリシティも上手かったのですが、それ以前に、なぜ、新潮社が売れていることに気づいたのでしょうか?
それはBOOKS昭和堂の「白い犬とワルツを」の発注量が尋常ではなかったからです。他の本より圧倒的に売れていると言う事実で気づいたのです。
そもそも新潮社のような大出版社が、100坪ほどの書店の動向など気にする意味がありません。津田沼にはもっとも広大な売場面積を持つ書店が他にいくつもあるのですから。
したがって、他の文庫本よりちょっと売れている程度では誰も気にしませんし、気づきません。新潮社がパブリシティに使おうとしたきっかけは、異常な数値を知ったからです。
そして、その異常値の秘密が、木下和郎氏による手書きのPOPだと考えました。新潮社はこのPOPのコピーを全国の書店に配りました。「白い犬とワルツを」は、それから半年ほどで150万部に達するミリオンセラーとなりました。
ただ、このニュースによるメディア露出は、木下氏にとって愉快な経験ではなかったようです。その後、彼はこの件について否定的な意見を言い続け、やがてPOPを書くのを止め、書店業界から去って行きました。残念なことですが、BOOKS昭和堂は木下氏を守ることができなかったのでしょう。
ちなみに、BOOKS昭和堂は2018年9月18日で閉店してしまいました。
カスタムモデルが本店の2倍の売上を記録
あるPCのカスタムモデルを企画して、それをアキバの本店の2倍売った事例です。
私が当時、店長を務めていた新宿店とアキバの本店では売上規模は7倍違います。それを考えたら、如何に異常な数字かわかると思います。
この異常な数値を叩き出したのは企画が良かったからではありません。と言うのは、同じチェーンの別な店でも同じカスタムモデルを販売していたからです。
それでも、そちらのモデルは売上ランキングに載ることはありませんでした。異常値を叩き出したのは私の店だけです。
その理由こそがPOPにあったわけです。
このカスタムモデルはCD-ROMをDVD-ROMに換装したモデルです。
販売POPは希少性を訴え、情報提供POPは、DVD-ROMはCDも使えること、しかも価格は1万円高いだけ、DVD-ROMを別に買うよりずっとお得と、お客様のメリットをこれでもかとばかり伝えました。
ここまでやったら最低でも通常の2倍は売れると思いました。売れる確信はありましたが、まさか2倍が本店の販売台数だとは思いませんでした。
なお、単価は1万円高く、粗利もたっぷりありました。しかも、取り外したCD-ROMは原価ゼロで手に入ったわけで、コレを1万円で売れば丸々利益となります。
ただ、残念なことにこのモデルは3週間で終わりました。フロアマネージャーが「クレームになったので販売を終了する」と言ってきたのです。
あのとき、どうして「クレームは全部オレに回せ」と言えなかったのか! 私の商売人人生で最大の後悔です。
もし、POPで2倍売れたら?
このようにPOPのメッセージ次第で通常の倍以上売れることは普通に起こりますし、10倍以上売れることも珍しくないです。
もちろん2倍10倍と言った数字を叩き出すためには、POPライティングを学ばなければなりません。
POPライティングを学んで、異常値を出せるようになったらあなたは何をしますか?
パブリシティを使って、木下氏のようにメディアに出ますか? そうすると、あなたの元には「この商品のPOPを書いてくれ」と依頼が殺到するでしょう。木下氏がそうだったように。あなたがこうした状況を利用できる人ならいいのですが。木下氏のように商品への思いが強い人にはお勧めしません。
私のように給料を上げてもらうのもいいでしょう。しかし、5万円も上がると税金も保険料も高くなります。小さな子供のいる人以外、必ずしも得とは言えません。給料をいくら挙げてほしいかを、税金、保険料を計算した上で決めるようにアドバイスします。ボーナスでもらう場合も同様です。
お勧めは、使える経費を増額してもらうことです。私は決済なしで使える経費を増やしてもらいました。元々店長には、部下を飲みに連れて行く、地元の祭りに協賛する、などのために、決済なしで使える経費がありました。それを増額してもらって、店長でいる間は「経費で落とす生活」ができました。
あなたも、もっと自由になるお金を増やしたくはないですか?