■作り手の言い分
おはようございます、小宮です。
私がまだ若くて一介のセールスマンだった頃、メーカーの商品企画担当と飲んだことがあります。
「お客とダイレクトに接している人の意見を聞きたい」と会社へ正式にオファーがあり、その月、たまたま売上成績が良かった私も出席できました。
業務扱いなので、閉店時間の2時間前に上がって、アキバの裏通りにあった、今はなき居酒屋に駆けつけました。
商品企画の担当者と会うことなんてめったにありません。絶好の機会ですし、お酒も入っていたので、言いたい放題、好き放題文句を言わせてもらいました。
もっとも、2時間もすると普通の宴会になってしまいました。
これ以上聞いてられないって思ったんでしょうね。
と言うのも、そのメーカーさんの中の一人が私にこんな愚痴をこぼしたからです。
「お店の人は、ちょっと商品を見ただけで『こんなもん売れない』とか言いますけど、一つの商品を発売するには、莫大なお金と労力がかかっているんですよ。
何日も徹夜するなんて当たり前の世界なんです。
数ある企画の中から商品になるのはごく僅かだし、商品として世に出るには製造部門や、営業部門、管理部門を説得した上で、さらにリスクの嫌いな社長を説得しなければならないんです。
そんな商品を『こんなもん売れない』と一言で片付けられたんじゃ本音を言うとやってられませんわ!」
そんなこと、知ったこっちゃないです。
いくら金や労力をかけようが売れないもんは売れないんですからね。
私たちにとって売れない商品を仕入れることは、会社に損失を与えることです。だから、絶対に避けなければいけないことです。
ただ、作り手は作り手で、命がけで作っているのだとは強く感じました。
売れないと思った商品はそれ以降も『こんなもん売れない』と一言で片付けていましたが、売れると思った商品はもっと深く商品を掘り下げようと思いました。
一般に、商品を知らないセールスマンより、商品を理解しているセールスマンの方が売れます。
セールスとは、商品を売ることではなく、商品を使うことによって得られる何かを売ることです。
たとえば「パソコンを使うとお孫さんと通話料無しでテレビ電話ができます」と言うのがセールスです。
しかし、これで終わりにするより、なぜそんなことができるのか、どうすればできるのか、をプレゼンできた方がより説得力が増します。
商品を売ろうとするなら、開発した人の想いまでさかのぼって商品を理解すべきでしょう。
そうでなければ、命がけで商品を作っている人たちに失礼と言うものです。
できれば私たちも命がけで売りたいものです。
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