2019年からヤマダ電機の傘下に入っていた大塚家具。2022年の5月1日付で法人としての大塚家具は消滅するとのことです。ブランドとしては残るそうですが……。
大塚家具と言えば、親と娘の権力闘争として面白おかしく取り上げられました。
ただ、そのせいで、本質的な原因が曖昧になってしまったように感じます。
そこで、なぜ、大塚家具は消滅することになったのかを、この機会にまとめておこうと思います。
ま、結論を先に言うと、小売店が破綻する「あるある」なんですけどね。私がいた2つの店も、同じ原因で消えてしまいました。そのくらい、ありふれた原因です。
おはようございます、パワー店長養成講座の小宮秀一です。
なお、ニュースソースはヤフーニュース。以下、引用です。
(株)ヤマダホールディングス(TSR企業コード:270114270、高崎市、東証1部)は2月14日、連結子会社の(株)ヤマダデンキが(株)大塚家具を5月1日付けで吸収合併すると発表した。ヤマダデンキと連携し、大塚家具の事業再建を進めていた。大塚家具のブランドは、今後も維持される見通し。1972年設立の法人としての「大塚家具」は消滅する。
news.yahoo.co.jp
なぜ、大塚家具は消滅するのか?
大塚家具の失敗の原因はいろいろ言われています。
高度な技術を持つ職人が会社を去ったり、先代からの長い付き合いのあった得意先から取引を打ち切られたりしたことで業績が低迷したとか……。
しかし、それはすべて結果論です。職人が会社を去るのも、得意先から取引を打ち切られるのも、すべての原因は売れないからです。
売れていたら職人も辞めないし、取引を打ち切られることもありません。
実は、大塚家具の失敗の原因は明らかです。
店の売上は客数×客単価で決まります。大塚家具は客数が減ったから100億円以上の大赤字となったのです。
親子の戦略の違い
大塚家具の場合、父社長は、高級化を選択しました。会員制にすることで、顧客ターゲットを絞って経営を行っていました。
ココで普通の経営者なら顧客に売る=ダイレクトメールとなるはずですが、大塚家具は違いました。
ユニークなことに、会員制にも関わらず、新聞の折り込みチラシに多くの資金を投じたのです。これが娘には仇となったのかもしれないですね。
権力闘争の末、娘が社長になると、大塚家具は大衆化に大きく舵を切りました。
そして、「広告は誰も見ていないし、入りやすい店作りをすれば宣伝は必要ない」と言う社長の一言で、広告宣伝費を大幅カットすることになりました。
いやいや、大衆化するなら広告宣伝は必須でしょ?
だって、「安い家具を買おう」と考えたとき、お客様は大塚家具のことを思い出さないからです。
小売店衰退の「あるある」
これは小売店が衰退する、「あるある」と言っていいです。
正直言うと、こう考える小売の経営者は少なくないです。売場を知らないで――正確には商品を知らないで――社長になった人は、特にこの傾向が強いです。
彼らは「お客なら店の前を歩いているじゃないか!」と思っています。「それなのに、どうしてお金を掛けて集客しなければならないのか?」とも、本気で思っています。
これについて、ある通販会社の社長に「店は、お客が偶然、来るのを待っている楽な商売」と言われたことがあります。言われたときはムッとしましたが、話を聞くと「なるほど」と思うことがたくさんありました。なかでも、一番、ハッとした指摘は、お客様が来なくなったとき、手の打ちようがないことです。なぜなら、お客様がどこから来ているかわからないからです。
そもそも、顧客は、維持するのにお金が掛かるし、新規客に至っては大金を積んで、赤字で獲得しなければならないです。
チラシを打たなくなった店は、顧客に忘れられ、新規客には気づかれない店となって、客離れが進んだと言うわけです。
ヤマダ電機が吸収合併することにした理由は、顧客がいなかったからではないでしょうか。顧客がいたら傘下に置いたままにしたでしょう。なぜなら、ヤマダ電機も電気屋の端くれ、顧客の重要性は知っているはずだからです。
ところが、傘下に置いてみたら、顧客がいない、あるのは商品と売場だけ。だったら、吸収して自分の店として扱う方がいいという判断でしょう。
顧客がいないから、2022年5月1日、大塚家具はヤマダ電機に吸収合併され、法人としての大塚家具は消滅することになったのです。
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