商売は戦いです。戦いにはやり方があります。商売人は、まず、戦い方の基本を知る必要があります。
1.強い相手と戦わない
2.勝てる相手と戦う
3.複数の相手と戦わない
50坪の店が1000坪の店と同じ土俵で戦っても絶対に勝ち目はありません。こんな相手とは戦おうと思わないことです。また、商圏にライバル店が3つあっても敵は一つに絞るべきです。3つ同時に戦おうとすれば力が分散してしまいます。
特に、強い相手と戦ってはいけません。絶対に勝てっこありません。米国との戦争が決断されたとき、日本の指導者層で勝てると思っていた人は一人もいないと聞きます。相手が巨大なら三十六計逃げるにしかずです。
勝負は勝てる相手と戦うことが鉄則です。
私が初めて店長をやった店はその手を使いました。かなり過激な話なので気分を悪くされる人がいるかもしれませんが、戦いとは元々残酷なものです。我慢して読んで下さい。
私の店はその地域で最大の売場面積を持つことができました。当時のライバル店は、私の会社より知名度の高い上場2会社の2店舗と、地場の小さなパソコンショップでした。
最大の売場面積ですから、地域の勝負では格上の2店舗にも勝てたかもしれませんが、私は彼らに喧嘩を売るのは避けました。この手の泥仕合なら相手の方が1枚も2枚も上手だからです。
私が戦う相手に選んだのは地場の小さなパソコンショップでした。正直に言いましょう、この店を潰そうと思ったのです。
これは別に私が過激な思想の持ち主というわけではありません。家電量販店の普通の戦い方です。格上の2社がやっているのと同じことをやったのです。
そのやり方はこうです。
出店したら、まず地場の電気屋が対抗できない安売りを仕掛けます。そしてライバルを排除します。早い話倒産に追い込むのです。
なぜ潰してしまうのかお分かりですか?
地域の店は、議員ややくざと繋がっていて、いろいろとうるさいからです。営業時間や商売のやり方について、とにかく細かく注文を付けられるのです。それを知っているから早いうちに潰してしまうのが楽なわけです。
ライバルがいなくなったら、あとは適正な売価でおいしい商売をします。つぶれた電気屋の社員は、サービス要員として雇います。店としては、恨みも残さず、サービスも強化できて一石二鳥です。
私もこの業界のやり方にならっただけです。地場の小さい店はうるさいのが多いので潰そうと思ったのです。
その小さなパソコンショップの主力商品を調べて、同じモノを全て扱いました。
同じスペックで、もっと安く売れる別なメーカーの商品はありました。でも、相手を潰すために、敢えて同じ商品を揃えました。売価はほとんど仕入値で値付けしました。
その小さなパソコンショップは、ユニークなセット販売をやっていました。そのセットもパクって、それもその店より安く値を付けました。
さて、あとは相手がどう出るかです。
彼らは私の挑発に乗ってきました。私が作った土俵の上に上がってきたのです。戦いのルールは私が作ったものです。彼らに勝ち目はありません。あとは攻撃の手を緩めず追い込むだけです。
1年後その店は倒産しました。
彼らに勝ち目はなかったと思いますか?
そんなことはありません。
私の店は、開店直前に従業員を募集したため、接客経験も、パソコン経験もない従業員ばかりでした。説明の難しい商品は扱えませんでした。
でも、彼らは違いました。難しい商品を扱えるスキルがありました。ユニークなセットがその証拠です。
私の会社は、当時、拡大指向が始まったころです。私の店も大型店でした。大型店を維持するためには、売上の規模が必要です。難しい商品を扱っても、売上はたかがしれてます。私たちがやってもメリットはありません。
彼らがその方向に逃げたとすれば、私は攻撃を止めるつもりでした。私の店は、そのルールでは戦えないからです。
ここから私は、「ライバル店は見ない方がいいのではないか?」という疑問を持ちました。ライバル店なんか見なくても、自分のお客さんを見ていれば、進む道は見えたのではないでしょうか?
ずっとあと、逆の立場に追い込まれて失敗したとき、この疑問は確信に変わりました。
あなたのお店はどうですか? 強力なライバル店と、同じルールで商売してませんか?
強力なライバルに勝つには、戦いのルールを変えることが大切です。
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