「誰もやらないからやる」と、言うのはカッコいいんですが、無知と紙一重なことがあるので注意が必要です。無知は悪いことではありませんが、自覚がないのはタチが悪いです。
私がいた会社の財務屋社長はある日、全店の店長にこんな指示を出しました。
「セッティングと操作指導を無料でやれ」
社長がこのアイデアを思いついたのは、彼の友人がパソコンを買ったときの話がきっかけです。
社長の友人と言うので、たぶん、店長が気を使ったのでしょう。セッティングと操作指導を無料でやったそうなのです。
当然のことながら社長のご友人は感動して、社長に感謝の言葉を伝えました。
これに気をよくした社長は、ライバル店がセッティングや操作指導をやってないか、やっていても有料なことを知りました。
それなら「無料でやれば喜ばれる」と、鶴の一声で実施が決まりました。
これは、「誰もやらないからやる」典型的な例です。
誰もやらないことには意味がある
しかし、誰もやらないことには意味があるのです。セッティングや操作指導が有料なのにもちゃんと意味があるわけです。
お客の家に派遣するのに、誰でもいいわけではありません。パソコンを知らなければ話になりませんが、知っていればそれでいいわけではありません。
最低限、お客の家のものをくすねたりしない、信用のできる人間である必要があります。その上で、しっかりしたマナーを身に付け、初心者にもわかる言葉で説明できなければならないのです。
こんなことができる人間、パソコン専門店とは言え、そんなにいるわけではありません。10人に一人か二人です。
厄介なことに、この一人か二人は、トップセールスマンなのです。
トップセールスマンを派遣したら、誰が店で売るのでしょうか?
こうした問題があるから、他店ではセッティングや操作指導はやらないか、やっても有料なのです。
トップセールスマンを無料で派遣するとどれだけ(見えない)ロスがあるか、他店は知っていたわけですね。もちろん、現場も。
一方で、パソコンにも小売にも素人である社長は知らなかったわけです。
素人が悪いわけではありません。ただ、少しでも現場の声を聞いたら、本来金勘定にはうるさい社長が「無料でセッティングと操作指導をやれ」なんて言わなかったでしょう。
誰もやらないことには何か意味があるのです。
そのアイデアは、誰かがやって失敗したアイデアなのかもしれません。あなたが天才でなければ、こちらの可能性の方がずっと高いでしょう。
そのアイデアが、失敗したアイデアでないかは必ず調べましょう。上司、先輩、取引先、お客に聞けば誰かは知っているはずです。
その上で、自分なら問題を解決できるできると思うならやればいいでしょう。これなら無知で失敗するより価値があります。
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